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事業会社での金融情報ベンダーの選び方

金融情報ベンダーを導入するメリット

経営企画部をはじめとした管理部門において、計画策定や意思決定を行うにあたり、情報収集やデータ分析は必要不可欠な作業です。

外部からの情報収集といえば、業界紙・インターネット等のメディア、官公庁・業界団体の統計データ、取引金融機関の作成したレポート等が代表的なものとして挙げられます。

いずれも役立つ情報ですが、これらのみですと情報収集やデータ分析に時間がかかりすぎてしまい、本来の目的である計画立案等の業務に充てる十分な時間が確保できなくなってしまう場面があります。

そこで、金融情報ベンダーを活用することで、業界動向の把握や財務・マーケットデータの取得を瞬時に行うことができるようになり、これまで何十時間もかかっていた作業を大幅に短縮化させることが可能となります。

そのため、導入には費用がかかりますが、情報収集やデータ分析の強化及び効率化のため金融情報ベンダーを活用している事業会社が年々増えています。

主要な金融情報ベンダーの特徴

金融情報ベンダーは幅広いデータを提供しており、事業会社では主に経営企画・財務・IR業務等に利用されています。

<金融情報ベンダーを活用する主な場面>

  • ベンチマーキング(自社と競合他社の財務・株価パフォーマンス比較など)
  • 業界動向の把握(M&A案件情報の収集、アナリストレポートの取得など)
  • 企業分析(買収候補先企業の初期的バリュエーション、取引先企業の信用リスク分析など)

様々な金融情報ベンダーがありますが、事業会社で一般的に利用されている代表的な金融情報ベンダーは下記の4プロダクトです。

もしお手元に投資銀行などが作成したレポートがありましたら、ページの注記部分を確認してみてください。おそらく出典として下記でリストアップしたいずれかのプロダクト名称が記載されているはずです。

いずれの金融情報ベンダーとも事業会社の経営企画・財務・IR業務で必要となるデータは一通り揃えていますが、それぞれユニークな特徴があります。

名称 特徴
Eikon
  • ロンドン証券取引所グループ(ロンドン証券取引所上場)傘下のRefinitiv社が提供
  • 弊社もランクインしているM&Aアドバイザーランキングであるリーグテーブルを作成していることで有名。公表情報に加え、リーグテーブル作成を通じてM&A案件情報の収集を行っているため、案件情報のカバレッジが強い。
  • 提供している上場企業のアナリスト予想データである「I/B/E/S」の知名度・信頼度が高い。
  • 海外企業情報のカバレッジが強く、国内外の上場企業に関するアナリストレポートの取得が可能
FactSet
  • FactSet Research Systems社(ニューヨーク証券取引所)が提供
  • 日経グループと提携しており、追加契約で日経NEEDSの財務データや予想値等にもアクセス可能
  • 海外企業情報のカバレッジが強く、国内外の上場企業に関するアナリストレポートの取得が可能
SPEEDA
  • UZABASE社が提供。SPEEDAの他、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」等を展開
  • 業界概要(業界動向、市場規模、主要なプレイヤー等)をサマライズしたレポートを提供。業界レポートのクオリティが高く、投資銀行やプロフェッショナルファームでもファンが多い。
  • 日本発のベンダーということもあり、日本企業の財務情報の取得・加工が容易
 S&P Capital IQ
  • 格付けやインデックスで有名なS&P Global社(ニューヨーク証券取引所上場) が提供
  • スクリーニングツールの操作性が高く、多様な切り口から企業・案件のリスト作成が可能
  • ユーザーフレンドリーなエクセルのアドイン機能(マーケット情報や財務データを直接エクセルへダウンロード可能)を提供
  • 海外企業情報のカバレッジが強く、国内外の上場企業に関するアナリストレポートの取得が可能

Notes:

  1. 金融情報ベンダーはアルファベット順に記載しています。
  2. プロフェッショナルファームや事業会社の特定の部署のみで利用されることが多いと考えられる専門性の高い金融情報ベンダー(Bloomberg、Mergermarket、orbis等)は上記リストに含めておりません。

各社とも収録データの拡充やユーザーインターフェイスの向上のため、積極的にプロダクトへの投資活動を行っており、日進月歩でプロダクトが進化しています。

また、導入時の操作方法についての研修の提供や、カスタマイズしたエクセルのテンプレートの作成等も行っており、事業会社が情報収集・データ分析の強化を図るうえでの良きパートナーとなってくれることでしょう。

金融情報ベンダーを選ぶ際のポイント

プロフェッショナルファームでは金融情報を用いた分析が本業の1つであるため、複数の金融情報ベンダーと契約しているのが一般的です。実際に当社でも複数の金融情報ベンダーを利用しています。

しかし、事業会社では予算の関係もあり、上記の4ベンダーの中から最も自社にフィットした金融情報ベンダーを1つ選定のうえ、使用することが多いと思います。

各ベンダー共に数週間程度の無料トライアル期間を設けているため、複数のベンダーにコンタクトし、実際に契約後に利用するメンバーがトライアルを実施し、契約する金融情報ベンダーを絞り込むといった手順が良いでしょう。

複数ベンダーを同時にトライアルすることで、各ベンダーの特色が分かるため、自社にフィットするベンダーが見えてきます。通常、金融情報ベンダーは年間契約となり、途中解約することが難しいため、実際に業務に落とし込んで使うことで、契約後に必要なデータが取れないといったトラブルを避けることが可能です。

また、既に情報ベンダーの契約があり、他ベンダーへの切り替えを検討している場合は、解約する前に既存ベンダーとの契約内容を改めて確認した方が良いと思います。デフレが続いている日本ではイメージしづらいですが、基本的に海外ベンダーの利用料は物価上昇率に合わせて毎年上昇する傾向にあります。

そのため、今から新規に金融情報ベンダーと契約をするよりも、既存契約が割安な状態となっており、乗り換えずに現状の金融情報ベンダーを使い続けることがコストパフォーマンス的に良かったということも起こりえます。

まとめ

本コラムでは、失敗しないための金融情報ベンダー選びのポイントを紹介しました。自社に合った金融情報ベンダーを選ぶことで、情報収集やデータ分析の強化及び効率化を図ることができます。

本稿をご覧いただくことで、皆様が金融情報ベンダーの検討・導入をスムーズに進めることができましたら幸いです。