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無形資産とのれんの償却期間

日本基準とIFRSの無形資産の無形資産の償却期間

日本基準においてもIFRSにおいても一定の無形資産については、規則的な償却が求められています。

日本基準とIFRSでは、償却に関する概念が多少異なっており、非償却が認められる範囲の広いIFRSと、原則として非償却を認めない日本基準という構図になっているものと理解しています。

顕著に表れるのは「のれん」の償却期間であり、日本基準では20年以内の規則的償却と明示されているのに対し、IFRSでは非償却とされています。

日本基準における無形資産の償却期間の決定方法

特に日本基準において、無形資産の償却年数が議論の対象になり易いと感じています。
日本基準では、のれんの償却期間が20年以内と明示されていることから、以下の2つの考え方があると思っています。


 ① のれんが、最長でも20年なので、無形資産の償却年数も最長20年である。
 ② 
無形資産の償却年数について、合理的な根拠があれば、20年を超過しても良い

IFRSでは、①の考え方は存在しないので、②の考え方に基づいて償却期間を検討することとなります。

私見ではありますが、日本基準が定めた20年に合理的な意味はないものと感じており、実務面を考慮して、20年と定めたものと思っています。PPAや価値評価に携わるものとしては、無形資産の効果の発現が20年以上の長期に渡ると考えられるのであれば、②の考え方の方が理論的であると思います。
しかし、現実的には②の考え方で償却期間を採用した我が国の無形資産の事例はほんの数例です(ゼロではないことは強調しておきます)。

したがって、①の考え方が実務上は主流であるように感じています。

なお、無形資産の償却期間と無形資産の金額には一定の比例関係を有することが一般的です。無形資産の価値評価に使用するCF期間が長期間となる際には、無形資産の金額も多めに算出されるものの、その償却期間も通常長期間となります。この場合、償却負担はほぼ変わらないことも多くあります。

「のれん」について

のれんは、期待収益やシナジーなど固有のものとして特定できない超過収益力や人的資産から構成されると考えられています。

無形資産は、有形資産には劣るものの、帰属するCFやその性質はのれんほど掴みきれないものでもなく、一定の特定は可能であることから、のれんに比べると、ですが、明確な資産概念があると思っています。

のれんの償却期間の考え方は、我が国においてPPAが今ほど普及する前から会社内や監査人も交えて議論されてきたものと思っています。これまで監査人となされてきた議論をご破算にさせるつもりはありませんが、無形資産の償却年数とのれんの償却年数は、相互に密接な影響を及ぼすものと考えています。

「のれん」と無形資産の償却期間の関係性

PPA実施後に算出される「のれん」の内容を正確に定義することはとても困難です。
無形資産は、その内容によって異なるとは思いますが、「のれん」よりは相対的にですが、内容を定義しやすいと思います。これは、償却期間をより積極的に決定できることを意味しています。

また、開示されている過去事例等を調べていくと、両資産の償却期間として「無形資産の償却年数≦のれんの償却年数」の関係性を有しているケースも多く見受けられます。

のれんや無形資産の償却年数を決定する際には、過去の類似事例や償却期間の関係性の傾向等も踏まえつつ、無形資産とのれんの償却年数を共に併せて検討した方がよいと思います。

なお、IFRSにおいては、当然ながらこの議論は存在しません。また、IFRSではのれんが非償却(正確には、償却期間を定められない)であることから、商標権や商号等が非償却となることも多く、その他の無形資産の償却期間もCF期間の計算等からある程度定量的に決定されていると思っています。