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IFRSにおける減損テストで使用する割引率

IFRSにおける減損テストで使用する割引率

景気後退局面の際にトピックにあがりやすい会計上の話題として、「減損テスト」があります。

過去には日本郵政や東芝、最近では大手商社の多額の減損損失の計上が報道されたのも記憶に新しいかと思います。また、減損損失の測定で使用される割引率は、特にテクニカルな領域があり当社への相談量・回数も多いため、本稿でも取り上げてみたいと思います。

なお、今回は、IFRSにおける減損テストで使用する割引率について、コメントしたいと思います。

 

減損テストにおける使用価値で使用する割引率は?

現行(202051日時点)のIFRSの基準(IAS36号)では、使用価値で使用する割引率は以下のように記載されています。

55.  割引率は、次のものに関する現在の市場評価を反映した税引前の利率でなければならない。

(a)   貨幣の時間価値

(b)   当該資産に関する固有リスクのうち、それについて将来キャッシュ・フローの見積りを調整していないもの

ポイントは、原則として「貨幣の時間価値」を加味した「資産・資金生成単位」の「税引前の利率」を使用することです。使用価値の計算のイメージとして、以下の通りです。

また、税引前割引率は、キャッシュ・フロー予測に適用した割引率として開示することが求められています。(IAS36号 134項)

実務上の取り扱い

実務上、上記55項で規定されている「資産・資金生成単位の固有リスクに対する市場の評価を反映した税引前の利率」を入手することは難しいため、税引後割引率をベースに減損テストを実施することを容認しています。(IAS3657条、付録A

 

税引後割引率と(税引後)FCFを使った使用価値の計算式は以下の通りです。

税引後割引率は、株式価値評価の局面で利用される加重平均資本コスト(以下、WACC)を指します。なお、割引率として検討する際のWACCは、一般的には税引後の概念として考えられます。
ファイナンス基礎理論では、負債がある場合には利息の支払いに伴う節税効果が期待できることから、有利子負債利率などから推計される負債コストには税金を考慮する必要があります。

            Re:自己資本コスト
            t:法人税率
            Rd:負債コスト
            D:有利子負債負債
            E:株式価値

開示上の対応(税引後WACCから税引前WACCの算出)

減損テストを税引後WACCで検討したとしても、開示のため税引前割引率を算出することが必要です。

理論上、税引後FCFを税引後WACCで割り引いたFCFの合計は、税引前FCFを税引前WACCで割り引いたFCFの合計と一致するため、税引後FCFと税引後割引率とで算出された価値を所与として、税引前WACCを逆算する形で算出することになります。この逆算の際に実務では、エクセルのゴールシーク機能を利用することが多いと感じています。

今後の動向

現在、IFRSの資産の減損については、償却の可否やヘッドルーム・アプローチの検討などの「減損テストの有効性の改善」に加えて、割引率などのインプット情報に関する「減損テストの複雑性の改善(簡素化)」についても、引き続き議論がされており、実務上の負担を考慮して見直しが検討されております。

IASBは、2020319日、討議資料「企業結合 - 開示、のれん及び減損」を公表し、企業結合についてのより良い情報の開示、のれんの会計処理(減損テストモデルの改良、のれんの償却)等について、利害関係者からの意見を募集しています。

 

割引率に関する具体的な内容は、以下の通りです。

l  使用価値を算定する際に使用するキャッシュ・フロー及び割引率がともに税前でなければならないという明示的な要求事項を削除する

l  上記の代わりに、企業にキャッシュ・フロー及び割引率について内部的に整合した仮定を用いること、及び実際に使用した割引率を開示する。

なお、実務では以前から税引後の概念で使用価値などの価値計算を実施していたことから、当社からすると、実務に即した変更となっていると読んでいます。

最後に

弊社では、投資実行時の株式価値算定や無形資産価値算定(Purchase Price Allocation)のみならず、減損テストに関する価値評価サービスも実施しております。
減損テストに関しては使用価値の算定のみならず、以下のような割引率のみのご相談や自社内で内製している減損テストのアドバイス等も実施しています。

     割引率の計算業務

     減損テストにおける価値算定業務

以 上