事例
- 有価証券報告書提出会社:大同メタル工業
- 被買収会社:ATAキャスティングテクノロジージャパン
- 被買収会社の事業内容:自動車用アルミダイカスト製品の設計・開発
- 取得対価:12,400百万円
- 取得持分比率:100%
- のれん:6,777百万円(償却年数14年)
- 顧客関連資産:697百万円(償却年数37年)
- M&Aの目的
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- 両社のグローバルな事業展開を加速させ、また、現地における人材交流や技術・ノウハウの共有化を通じた技術力・生産力の向上、運営体制の効率化などが可能になる。
- 当社の自動車業界における国内外の幅広い顧客基盤を活用した拡販により、さらなる業績の発展が期待できる。
本開示事例には以下の2つの特徴があると思います。
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無形資産の償却年数
顧客関連資産の償却年数は37年という極めて長期の償却年数となっており、おそらく監査上も大きな論点となったものと思われます。被買収会社の販売先(顧客)は自動車メーカーと思われ、通常長期間の取引関係を有しているため、その償却年数が相対的に長期間となる点は違和感がないのですが、それにしても長期間です。37年という償却期間は弊社のデータベース上、顧客関連資産の中では最長となります。
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無形資産の償却年数と配分割合の関係
顧客関連資産の金額がのれんや取得対価と比較し極めて少額となっています。通常、無形資産の経済的耐用年数と無形資産の金額の多寡には正の相関関係がありますので、経済的耐用年数が長期間となる際にはその金額が相対的に多額となることが通常だと思いますが、本件では償却期間が超長期であるにもかかわらず、配分割合は小さくなっています。IFRS適用会社を前提とすると、のれん+無形資産の償却費を最小化するため、「可能な限り、無形資産の金額をより小さく、償却年数はより長く」という依頼を受けることがまれにあります。しかし、上述の通り、その対応は通常困難ですが、本件ではそれを実現しています。
有価証券報告書提出会社と被買収会社の顧客はいずれも自動車メーカーであると推察されるため、顧客が重複している先から生み出される価値は顧客関連資産として集計しなかったのかもしれませんが、どのようなロジックでこのような結果となったのか、個人的には非常に気になる事例です。