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無形資産の認識に伴う税効果

企業結合時(本稿は特に明示しない限り、ある国内企業が、他の国内企業の株式を取得することによって連結子会社化することを想定しています)には、識別可能資産及び負債の企業結合日時点の時価を基礎として、取得原価を配分します(連結財務諸表に関する会計基準20項、企業結合会計基準28、66項など)。その結果、企業結合前の貸借対照表に計上されている資産、負債に時価評価差額が発生した場合や、顧客関係等の貸借対照表に計上されていない無形資産を識別可能資産として認識した場合には、一般的に一時差異が発生することになります。そして、当該一時差異については、回収可能性又は支払可能性を考慮したうえで、繰延税金資産又は繰延税金負債を計上する必要があります。

したがって、例えば、顧客関係等の無形資産を新たに識別可能資産として認識した場合、これら資産の税務上の簿価は通常ゼロであるため、無形資産の認識金額がそのまま一時差異の金額となり、当該一時差異金額に税率を乗じた金額を繰延税金負債として計上することになります。

連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針21~26項にこのあたりのルールが記載されているのですが、企業結合に伴い無形資産を識別可能資産とするケースに初めて遭遇した場合は特に計上が漏れるケースが多いと思います。

そして、無形資産の認識に伴う繰延税金負債を計上した場合には、同額ののれんが増えることになるため、PPA実施後ののれんはPPA実施前ののれんから無形資産の認識金額を引いた金額とはなりません。したがって、無形資産を認識すればするほど、繰延税金負債の金額が増加し、日本基準を適用している場合は償却対象の無形固定資産が増加することになります。

具体的な数値を用いてそのインパクトを確認したのが以下の図となります。

前提条件:企業結合前の純資産100(諸資産150、諸負債50)の会社の100%を250で買収し、無形資産50を認識したケース。税率は30%と仮定